新たに会社を設立して宅建業免許を取得しようとなさる方の中には、初期費用を抑えるために自宅兼事務所で開業したいという人も多いと思います。自宅兼事務所だから一概にダメというわけではありません。免許が受けられるケースと受けられないケースがあります。特に東京都の申請では審査が厳しくなっていて、自宅兼事務所でダメだと言われるケースも多いようです。そこで自宅兼事務所で開業する場合の注意点をお伝えします。

宅建業免許の「営業所」の考え方

まず、宅建業で言うところの営業所とはどういったところなのでしょうか?東京都の手引等によると以下のように定義されています。

物理的にも宅建業の業務を継続的に行える機能を持ち、社会通念上も事務所として認識される程度の独立した形態を備えている

簡単に言うと、宅建業免許を受けるための事務所には継続性と独立性が必要だということが謳われています。では、事務所の継続性と独立性はどのような点から確認をとっていくのでしょうか?詳しく解説していきます。

継続性について

継続して事業を行う場所がないと、顧客にとってわかりにくいですし、書類の保管などが難しくなるため、宅建業では事務所の継続性として、一定期間以上、引き続きその場所で営業をしていくことができるかどうかを判断します。

例えば、屋外に建てたテントのような場所で継続して営業ができるかといえば、難しいですよね。そういう場所では宅建業免許を受けることはできません。また、定期借地契約で更新ができないような場所が事務所で、有効期間があと1ヶ月しかないというような場合も、継続性が認められないと判断される可能性があります。

独立性について

宅建業では、顧客情報や契約書を事務所で管理したり、顧客が事務所に来て、相談や契約行為を行うことがあります。そのため、他の会社や住居をスペースが一緒だと、他の会社と書類が一緒になってしまったり、他の会社の社員が事務所内をうろついたりすることになってしまったり、日常生活と業務の境目がなくなってしまったりして、トラブルに発展してしまう可能性があります。そこで宅建業では事務所の独立性を確保するように定めています。

自宅兼事務所で宅建業免許申請をする

問題になるのは独立性

自宅兼事務所の場合でも、継続性と独立性が確保されているかどうかが問題になります。継続性については、自宅が営業可能な物件であれば問題ないでしょう。ただし、事業で使用できない賃貸借契約の場合や、定期借地契約ですぐに退去しなければいけない場合は、問題となる可能性があります。

問題になるのは営業所の独立性です。例えば、自宅がワンルームマンションだったとします。そうすると、生活スペースと営業所スペースが同じ仕切り内にあることになってしまします。これだと、独立性が確保されているとは言えませんね。そのため宅建業免許を受けることができないと判断されてしまします。

では、自宅兼事務所では宅建業免許を受けることはできないのかと言うと大丈夫な場合もあります。玄関を入って、廊下があり、その廊下から直接行ける部屋を営業所として使用するような場合はOKです。廊下は住居スペースと営業所スペースの共有部分として扱います。生活スペースと、住居スペースそれぞれが独立していると判断できるので宅建業の営業所としても使用することが可能です。戸建の住宅で事務所スペースが2階にあるような場合も扱いは同様です。玄関を入って廊下があり、廊下から階段が伸びており、二階に登って、廊下から営業所スペースとして使用する部屋に行くことができれば、独立性が確保されていると判断されます。

ワンルームはどうしても無理か?

「ワンルームマンションの部屋の内部をパーテーションなどで区切って部屋を作って申請することは可能ですか?」と相談を受けることもあります。理論上は可能と言えますが、東京都ではパーテーションは固定式のものでなければならないとしており、マンション内部に固定式のパーテーションを設置することは難しく、実際は難しいという状況です。

NGだった自宅兼事務所の事例

自宅兼事務所で申請をして、NGだったり、写真の撮り直しが必要になる事例をいくつかご紹介していきます。宅建業の申請を扱い始めて初期の頃の申請でNGを受けた事例だったり、運用が変わってNGになった事例だったりします。

部屋にマットレスがある

部屋にマットレスがある場合は、マットレスをどかして写真を撮影するように指示されました。マットレスを壁に立て掛けてもNGです。また、水平ハンガーにシャツやジャケットが掛かっていたのですが、ついでにそれもどかして写真を撮るように言われました。対応としては、そもそもマットレスは不用品でしたので、廃棄してもらい、改めて撮影をして受付となりました。

水回りスペースの入口

玄関を入って、廊下があり、営業所と生活スペースの独立性も確保されていたのですが、廊下から直接入ることのできるバス・トイレ・洗面台への入口に扉がなく、暖簾がかかっていただけだったのがNGとなりました。暖簾ではなく、アコーディオンカーテンなどで、内部が見えないようにするようにと指示されました。そこで、アコーディオンカーテンを購入していただき、取り付けをして、受付となりました。


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