規模が大きくなったり、ノウハウが蓄積されたりして、事業拡大していくときに支店を出すというも一つの選択肢となってきます。ただし、宅建業の場合は、事業所を借りれば、即営業できるというものではありません。要件をクリアし、各種手続きをした上で支店の営業が可能となります。ちなみに宅建業を行わない場合は免許は不要です。他の許認可等の手続きがなければ、好きに始めていただいて構いません。

支店を開設するための要件

支店を開設するための要件には以下のようなものがあります。

  • 宅建業に従事する5人に1人が専任の宅建取引士であること
  • 営業所があること
  • 供託をするか保証協会に分担金を納めるか

新規で免許を受けるときと何ら変わらず、要件を満たしている必要があります。また、政令使用人という支店長などの立場で契約締結の権限の委任を受けている者を支店に設置して申請する必要があります。政令使用人は専任の宅建取引士と兼務が可能です。では、各要件について詳しく見ていきましょう。

専任の宅建取引士

宅建業に従事する5人に1人は専任の宅建取引士でなければなりません。これは支店でも同様です。専任とは支店が営業している日は原則として出勤しているという意味ですので、本店の専任の取引士が支店の専任の取引士を兼務することはできません。会社の都合で単身赴任で地方に行くことがあったりもしますが、勤務できる範囲に住まいがあり、勤務できれば大丈夫です。そのため、住民票を移さなくても賃貸借契約書や居所証明などを作成して申請することで専任の宅建取引士として認められます。

営業所の要件の確認

営業所の要件は「継続性」と「独立性」です。支店でも同様です。継続性は、継続して使用することができるという意味です。会社で所有している物件であったり、賃貸借契約であれば、自動更新や更新可能の物件ということになります。独立性は決まったスペースを独占的に使用できるという意味です。別の会社と同居していたりするのは不可となります。

供託か保証協会に分担金を納めるか

供託の場合は支店は500万円(本店は1,000万円)です。本店を管轄する供託所に供託します。保証協会に分担金を納める場合は30万円(本店は60万円)となります。

支店登記は必要か?

支店を支店登記しなければならないかどうかは各自治体や窓口の担当者レベルで扱いが異なるようです。ただ、「〇〇支社」や「〇〇支店」を名乗る場合は、支店登記したほうが無難だと思います。「〇〇営業所」と名乗るのであれば、これまでは支店登記していなくても申請上問題になったことはありません。ハイクで扱った事例で、大臣免許への許可換えで支店登記していない営業所を支社として申請しようと際に、「待った」がかかったことがあります。さすがに支社は登記していないと認められないということでした。

大臣免許か知事免許か?

本店がある同じ自治体に支店を出す場合は知事免許のままとなりますが、本店がある都道府県とは異なる都道府県に支店を出す場合は大臣免許に免許換えとなります。知事免許のままであれば、免許番号は変わりませんが、免許換えだと免許番号が変わります。カッコ内の更新の回数も1からの再スタートとなってしまうので、気になる業者さんもいるかもしれません。実際、カッコ内の番号が1になってしまうので支店を設置するのをやめた業者さんもいらっしゃいます。別に会社を設立して、そちらで宅建業免許を取るという対応をいたしました。大臣免許にして広い範囲で営業しているということをアピールしたいという人もいれば、カッコ内の更新回数を意識して、長い実績があることをアピールしたいという方もいて、考え方の違いを感じました。

保証協会への手続き

保証協会に加入の場合は支店が負担する分担金は30万円です。ただし、関連団体に入会が必要なので、支店を設置する際は合計で100万円弱程度はかかるようです。全日本不動産協会の場合は、本店を管轄する支部が窓口になってくれて支店の入会手続きを進めることができます。宅建協会の場合は、支店を管轄する支部に直接入会の申し込みをします。宅建協会の場合は、支店ごとにルールが異なってくるので事前に必要書類の確認などを取りながら申請を進めていくことが手続きをスムーズにするコツとなります。

ハイク行政書士法人で取り扱った事例

全国に支店のある業者のケース

東京、大阪、広島、長崎などに支店のあるお取引先の申請では、本店の担当者さんと一緒に2泊のスケジュールを組んで各支店を回らせてもらっています。宅建協会に加入している業者さんなので、変更が絡んだりすると宅建協会の各支部へ届出が必要になってくるので事前に確認を取りながらの準備となります。

都内に支店がある業者さんのケース

都内に3店舗の支店がある業者さんなのですが、宅建取引士の人材不足があり、専任の宅建取引士をうまくやりくりしながら、申請をさせてもらっております。


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